犬の腹水とは、犬のお腹に異常な量の水が溜まってしまう状態のことを指します。
腹水が溜まるとお腹が膨れるため、肥満と勘違いされてしまうこともしばしばあります。
しかし、腹水はさまざまな病気の末期症状として現れることが多いため、腹水がわかった段階で余命を宣告されてしまうケースも少なくありません。
そこで今回は、犬の腹水の末期症状や余命、腹水の見分け方などについて詳しくご紹介します。
いざというときに向きあうことができるよう、しっかり覚えておきましょう。
犬の腹水の症状とは
犬の場合、腹水が少量しか溜まっていない場合は特に症状がみられません。
しかし腹水の量が増えてしまうと、
- お腹が膨れる
- 元気や食欲がなくなる
- 吐いてしまう
- 呼吸が荒くなる
などの症状がみられるようになります。
末期症状は?
そもそも多くの場合、犬の腹水は病気の末期症状として現れます。
しかし、
- ぐったりして動けない
- ごはんや水分を口にすることができない
- 苦しそうに呼吸をしている
などの症状がみられる場合はより状態が重く、治療を行ったとしても命を落としてしまう可能性が高くなります。
▼呼吸困難に陥ってしまったM.ダックスフントのセナ君。呼吸がとても苦しそうです。
犬の腹水の余命は?
犬に腹水が溜まっていることが判明しても、場合によってはすぐに治療を行うことで数年生きられることもあります。
しかし、腹水は病気の末期症状として現れます。そのため、余命は数日~数カ月程度と宣告されるケースがほとんどです。
肝臓がんと腹水の余命は?
肝臓はかなり大きなダメージを受けでからではないと症状が出ないことから、「沈黙の臓器」と呼ばれています。
犬の肝臓がんも例外ではなく、かなり病気が進行しないとほとんど症状がみられません。
つまり、腹水が異常に溜まっているということは、すでに肝臓がんが大きくなっていて、肝臓の機能もかなり低下している可能性が高いということになります。
すると手術を受けることが難しくなるため、余命は数日~数週間であることがほとんどです。
犬の腹水の最後はどうなる?
腹水がどんどん溜まってくると、呼吸がうまくできなくなり、体にうまく酸素がまわらなくなります。
すると意識がもうろうとしたり、痙攣を起こしたりして、何もしなければ最後はそのまま亡くなってしまう可能性が高いでしょう。
腹水が溜まってくると、犬もかなり苦しい思いをします。
そのため、回復が難しいとわかった段階で、痛みや苦しみを軽減してQOL(生活の質)を向上させる「緩和ケア」を選択する飼い主様もいらっしゃいます。
また、回復する見込みがないのに苦しい思いをさせるのはかわいそうだと、安楽死を選択する飼い主様もいらっしゃいます。
犬の腹水の見分け方
腹水は肥満と間違われてしまいがちですが、うっかり見逃してしまうと急に容体が急変してしまうこともあります。
そんな事態を防ぐために、犬の腹水の見分け方を3つご紹介します。
見た目はお腹がパンパン?
肥満の場合はお腹だけでなく、背中や首回りなどにも脂肪がつくため、体が全体的に大きくなります。
しかし、腹水が溜まってくると見た目は妊娠したかのようにお腹だけがパンパンに膨らみます。
そして犬のお腹を触ると、水風船のように中の水がポチャンポチャンと動くように感じられます(波動感)。
水を飲む頻度が多い
肝臓がんをはじめ、肝臓の病気が原因で腹水が溜まっている場合は水を飲む頻度や量が増えることがあります。
個体差はありますが、犬が1日に水を飲む量は体重1kgあたり50ml程度といわれています。
そのため、たくさん運動をしたわけでも暑い日でもないのに急に水を飲む頻度や量が増えた場合は、念のため動物病院を受診することをおすすめします。
あまり食べないのに体重が増える
腹水が溜まってくると、胃や腸が圧迫されてしまうので食欲が落ちます。
それにもかかわらず体重が減らなかったりむしろ増えていたりする場合は、腹水が溜まっている可能性が考えられます。
犬の腹水の治療法は?
犬の腹水の治療には、
- 腹水が溜まらないようにする
- 腹水を抜く
の2つの方法があります。
では、具体的にどんな治療を行っていくのかみていきましょう。
マッサージ
腹水が溜まらないように、おしっこの量を増やして体の外に水分を出す必要があります。
その方法の一つがマッサージです。
犬を真上から見た時、腰からお尻にかけて、背骨の左右にほぼ直線状に膀胱のツボが並んでいます。
そのため、ここをマッサージして刺激してあげると、よくおしっこが出ます。
- まずは両手の指を軽く開いた状態で指の腹を腰の部分に当て、お尻の方に向かって優しく撫でます。
- ①と同じ場所を、手のひら全体で優しく撫でます。
- 最後は親指の腹を使って、円を描くようにしながら①②と同じ場所を撫でましょう。
ただし、自宅でマッサージをする際は必ずかかりつけ医に相談してから行うようにしましょう。
利尿剤
利尿剤は犬の腹水の治療によく使用される薬です。
マッサージと同じように、おしっこの量を増やして体の外に水分を出すことができます。
手術で抜く
犬が呼吸困難に陥っている場合などは、すぐに手術で腹水を取り除く必要があります。
手術といってもお腹にメスを入れるわけではなく、針を直接お腹に刺して溜まっている腹水を抜きます。
腹水を抜くことで圧迫されていた臓器は解放され、元気や食欲、呼吸状態などが改善されます。
原因となる病気の治療
原因となる病気が治らない限り、腹水を抜いたところでまた新たに腹水が溜まってきてしまいます。
そのため、腹水に対する治療と並行して、腹水の原因となっている病気の治療も行う必要があります。
犬の腹水が自然に抜けることはある?
実は健康な犬であっても、微量の腹水が溜まっています。
通常は作られる量と吸収・排出される量のバランスが保たれていますが、病気によってこのバランスが崩れてしまうと異常に腹水が溜まってしまいます。
つまり、原因となる病気が治れば、腹水は自然に抜けるため元の量に戻ります。
ただし、腹水は病気の末期症状として現れます。
そのため、治療を受けずに病気が治り、腹水が元の量に戻る可能性は限りなく0に近いでしょう。
まとめ
いかがでしたか?
腹水は病気の末期症状として現れることが多いため、一刻も早く治療を受ける必要があります。
また、腹水が溜まれば溜まるほど犬の苦しみも大きくなるため、なるべく早く異常に気づいてあげることも大切です。
肥満かも?と思っても、お腹がパンパンに膨れている場合は腹水の可能性を疑い、すぐに動物病院を受診するようにしましょう。
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